ニューヨーク州のワイン産地は、地理的な特徴を判断基準として、TTB(財務省アルコール・タバコ税貿易局)が定めるAVA(政府公認ワイン用ブドウ栽培地域)によって分類されている。州内には7つの主要なAVAが認定されており、内部に小さなAVAを包含するものもある。フィンガー・レイクスの中にあるセネカ・レイクAVAとカユガ・レイクAVA、ロング・アイランドの中にあるハンプトンズAVAとノース・フォークAVAがその例である。
ニューヨーク州は6つの主要なワイン産地から構成されている
ニューヨーク州では何百年も前からブドウが生育しており、17世紀後半に最初の植樹はオランダ系移民によって初めての植樹が行われたという記録が残っている。何年もの間、アメリカ原産品種とハイブリッド品種のみが栽培されていた。高品質とされる欧州系のヴィニフェラ品種が導入されたのは1950年代末のことで、ウクライナ生まれのコンスタンティン・フランク博士によってフィンガー・レイクスでの試験栽培がスタートした。
今日、ニューヨーク州ではハイブリッド品種とヴィティス・ヴィニフェラ品種の両方が栽培されており、高級ワインの生産が増加し、世界から関心を集め続けている。現在ワイナリーの数は420軒を超えているが、うち400軒以上が1976年以降に設立されたものだ。
フィンガー・レイクスは、オンタリオ湖に向かって南から北に伸びる複数の湖の総称である。その名前は、同じ方向に並んだ細長い11の湖がまるで人間の指のように見えることに由来している。湖の水深が深く、夏の暑さと冬の寒さの両方が適度に調整されるため、ニューヨーク州北西部という厳しい環境でのブドウ栽培を可能にしている。最も大きなセネカ湖と、それに次ぐカユガ湖は、冬でもほとんど凍ることが無い。19世紀の後半、ドイツやスイス、フランスからやってきた入植者らはこの事実に注目し、湖がもたらす豊富な淡水を活用できる果樹園に将来性を見出していたのだろう。フィンガー・レイクスAVAは、北米の淡水湖周辺のブドウ栽培地域を特徴づける“三角形”の一角として、次に述べる2つの産地とともに地理的に重要な意味を持つ。
“三角形”の他の部分は、ミシガン州北西部のペニンシュラAVAとカナダのオンタリオ州南部を指す。これらの地域は、フィンガー・レイクスと同じく約11,000年前の氷河期に切り開かれ、頁岩や石灰岩、さまざまな岩石と砂土が、湖岸や渓谷の水はけのよい斜面に沿って堆積し、形成されたものだ。五大湖盆地と呼ばれる地域で、パリ盆地(シャンパーニュ、シャブリ、サンセール)に少し構造が似ている。フィンガー・レイクスは、ニューヨーク州のどの地域よりも、ミシガン州やオンタリオ州のAVAとより多くの共通点を持つユニークな産地である
ニューヨーク版 “パリスの審判”ともいえる2つの歴史的な出来事がある。1871年、プレザント・ヴァレー・ワイン・カンパニーのスパークリングワインが、アメリカワインとして初めて欧州のコンテストでダブル・ゴールドを受賞したのである。ラブルスカ品種のカタウバCatawbaとデラウェアから造られた、トラディショナル方式(瓶内二次発酵) のワインだった。1950年には、シャルル・フルニエ氏(元ヴーヴ・クリコのセラーマスター)のゴールドシール・シャンパーニュ・ブリュットが、カリフォルニア州のフェアで唯一の金賞を受賞した。この出来事以来、このコンテストでは他州からのエントリーが許されていない。ちなみに、フルニエ氏はニューヨーク州にハイブリッド品種を導入した人物と言われている。
ヴィニフェラ品種への最初のアプローチがいつ行われていたか、正確な情報を得ることは不可能だが、ウクライナ生まれの型破りな学者、コンスタンティン・フランク博士の取り組みについて記録が残っている。1950年代のこと、寒冷な地域で難しいとされてきたヴィニフェラ品種の商業的な栽培に初成功し、ヴィニフェラ革命の道を切り開いた。博士の成功は、フィンガー・レイクスが北米のリースリング(いつの日かカベルネ・フランも)銘醸地へと進化する輝かしい未来を予見させるものでもあった。現在、シャルドネやピノ・ノワール、ブラウフレンキッシュをはじめ、様々な品種が実験的に栽培され、品質の高いブドウから素晴らしいワインが造られている。
ニューヨーク ワイン レファレンス ガイドは、ニューヨーク ワインと産地の特長・歴史・データなどの詳細な情報をまとめたガイドです。
日本語版は抜粋バージョンとなっております。
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