Paumanok Vineyards
Silver Thread Vineyard
2025年の栽培シーズンが本格化し、昨シーズンはすでに遠い過去の出来事のように感じられるかもしれない。しかし、ニューヨークのワイナリーやブドウ園がどのような一年を過ごしたのか、振り返りたい。
昨年10月、ブドウの収穫が終わる頃には、「エピック」なシーズンになるかもしれない、という声がすでに聞かれていた。ニューヨーク州の主要な栽培地域から集まった生産者たちは、2024年以前に経験した早すぎる芽吹き、春の遅霜、度重なる大雨、収量減少などの厳しい条件を振り返りつつも、前向きな見通しを示していた。
そこで、昨秋にインタビューを行った州内各地の4つのワイナリーに再度取材を行い、2024年ヴィンテージに対する当初の予想が正しかったのか、または予想外の出来事があったのかを確認した。
パウマノック・ヴィンヤーズ(ロングアイランド)
2024年の収穫期の最中、パウマノック・ヴィンヤーズ(Paumanok Vineyards)のワインメーカー、カリーム・マソウド(Kareem Massoud)は「収量は少ないものの、非常に高品質なヴィンテージになりつつある」と語っていた。
その見立ては概ね的中し、品質面では期待どおりの結果となったが、残念ながら収量の少なさという予想も現実となった。
「私が経験した中で最も厳しいヴィンテージだった。しかし同時に、私たち全員が記憶する中で最も理想的な成熟条件が揃った年でもある」とマソウドは述べる。「ヴィンテージ期間中、実に3カ月間雨が降らなかった。ただし、2024年4月26日に発生した激しい春の霜が甚大な被害をもたらし、多くの芽が枯れ、成熟させる果実自体がほとんど残らなかった」
この年は日照に恵まれ、乾燥した天候が続き、生育期には涼しい夜が多かった。こうした条件から、マソウドは赤ワインの品質に強い期待を寄せていたが、その予想もまた正しかった。
「2024年の赤ワインは非常に期待できる。すべての品種で高い品質水準に達している」と彼は語る。「ただし、収量は非常に限られている」
一方、2024年ヴィンテージには予想外の好材料もあった。
「白ワインの品質は、私の想定を上回る出来栄えとなった。凝縮感とバランスに優れ、低いpH値も確保できている。2013年を思い起こさせるような素晴らしいヴィンテージだ」とマソウドは締めくくった。
ベラ・ローズ・ヴィンヤード・アンド・ワイナリー(ナイアガラ・エスカープメント)
昨年秋、ナイアガラ・ワイン・トレイルの会長であり、ベラ・ローズ・ヴィンヤード・アンド・ワイナリー(Bella Rose Vineyard and Winery)のオーナーでもあるマイケル・シュヴァイツァー(Michael Schweitzer)は、この地域で「日照と高温が驚くべき結果をもたらし、特に赤ワインの品質向上に寄与した」と語っていた。
ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランなどの品種が具体的に挙がっていたが、2025年春時点でのそれらの赤ワインの状況について問い合わせた。
「ナイアガラ地域では、特にピノ・ノワールが素晴らしい出来になるだろう。一方で、白ワインは厳しいシーズンとなり、特に早熟タイプのヴィニフェラ種は苦戦を強いられた」とシュヴァイツァーは語る。「全体的に見れば、天候の影響による課題が多く、満足できる生育シーズンとは言い難かった」
とはいえ、厳しい状況の中でも優れたワインが生まれたことは確かである。
「2024年ヴィンテージでは、赤ワイン、そしておそらくロゼが最も成功を収めるだろう。特に遅摘みに適した品種や果皮の厚い品種が、良好な結果を残した」とシュヴァイツァーは結論づけた。
ホワイトクリフ・ヴィンヤード&ワイナリー(ハドソン・バレー)
昨年10月、2024年の収穫について尋ねられた際、ホワイトクリフ・ヴィンヤード&ワイナリー(Whitecliff’s Vineyard & Winery)の共同創設者であるヤンシー・ミグリオーレ(Yancey Migliore)は「完璧な収穫だった」と語っていた。
当時、ミグリオーレは、温暖かつ乾燥した天候がシーズンを通じて続いたことを挙げ、これこそが優れたヴィンテージの条件であると説明した。また、収穫開始が8月最終週という早いタイミングで可能だったこと、さらに「これほど理想的な9月は記憶にない」とも語っていた。
しかし、その時点では収穫はまだ終わっておらず、最終的な評価には収穫の全体像を待つ必要があるとも注意を促していた。ミグリオーレはまた、「シャンパーニュ製法による素晴らしいスパークリングワインができる可能性がある」との期待も示していた。
その発言から半年以上が経過した現在、ミグリオーレは、収量こそ当初の予想を下回ったものの、品質面では非常に満足のいく結果となったと報告する。
「スパークリングベースワインは非常に良い仕上がりで、果実のキャラクターが際立っている。2024年ヴィンテージのペット・ナットはスター的存在になる可能性が高い」とミグリオーレは述べた。
赤ワインについても同様に高い評価が得られている。
「2024年は赤ワインにとって特別なヴィンテージとなるだろう。ブドウの熟度は素晴らしく、ブリックス(糖度)が上昇しても酸度がしっかりと保たれている。熟度の高さはすでに樽の中で明確に現れている」とミグリオーレは語った。
シルバー・スレッド・ヴィンヤード(フィンガーレイクス)
シルバー・スレッド・ヴィンヤード(Silver Thread Vineyard)のオーナー兼マネージャーであるシャノン・ブロック(Shannon Brock)は、2024年の収穫を終えた時点で、果実の品質について「クリーンでバランスの取れたもの」と評価していた。現在、その特徴はワインにも反映されているという。
「このワインは確かにクリーンでバランスが取れ、非常に高い品質に仕上がっている。優れた果実から始まったことの自然な結果だ」とブロックは語る。「悪い果実からは決して素晴らしいワインは生まれない。偉大な可能性を持つ果実を手にできたことは非常に喜ばしい」
ニューヨーク州各地の生産者が2024年の赤ワインを称賛する中、ブロックは自身のドライスタイルの白ワイン、とりわけリースリングの出来栄えに強い満足感を示している。
「以前、フィンガーレイクスのブドウはドライスタイルに適していると伝えたが、その見解は今も変わらない」と彼女は語る。
「2024年はフィンガーレイクスの記録上、最も暖かい生育期となり、その影響でブドウの酸度は平均を下回った。酸度が低いことで、リースリングのドライスタイルはより親しみやすくなり、結果として多くのドライリースリングを仕込むことができた。同様に、ゲヴュルツトラミネールも非常にドライなスタイルで仕上げた。これはシルバー・スレッドでは必ずしも一般的ではないが、2024年の条件がそれを後押しした。また、例年同様、ミディアム・ドライやセミ・ドライのリースリングも生産しており、いずれも高い熟度を反映した、力強く濃厚な仕上がりとなっている」
ブロックがフィンガーレイクスに対して常に感銘を受け、安心感を得る理由は、天候の大きな変動がありながらも、毎年一貫して優れたワインが造られる点にある。
「2024年のワインはユニークな特徴を備えているが、過去すべてのヴィンテージと同様に、フィンガーレイクスならではのアロマや複雑さ、そしてフレッシュさがしっかりと感じられる」とブロックは述べる。
このように、気象条件が年ごとに大きく変動する中で一貫して高品質なワインを生み出す能力は、フィンガーレイクスのみならず、ニューヨーク州全体の栽培者とワインメーカーの経験と適応力を示すものである。2025年の生育シーズンがどのような条件をもたらすかは未知数だが、ニューヨークの生産者たちがその変化に柔軟に対応する術を熟知していることは間違いない。
画像提供:Rima Brindamour
※本記事はワインライターのKathleen Willcox and Robin ShreevesがNYワイン&グレープ財団のために執筆した記事の抄訳版です。