Yannick Benjamin
レストラン Contento
以前ほどではないが、ニューヨーク州産のワインを提供するニューヨークのレストランはまだ珍しい。フィンガー・レイクスのリースリングならオンリストしているかもしれない。ワイン・バーなら、もう1、2種類は置いているかもしれない。ローカル食材を扱う「ファーム・トゥー・フォーク」を謳うレストランでさえ、ニューヨークのブドウ畑が、ローカル・ファームのひとつである事を見落としがちだ。
NYワインをオンリストしているレストランもいくつかはある。しかし、ローカル・ワインに1ページまるごと使っていることは稀だ。イースト・ハーレムの『Contento』では、米国東海岸のテロワール専用のページがある。ニューヨークのワインがページの大半を占め、バージニアとノース・カロライナのワインが数本添えられている。
この興味深いワインリストをつくったのは、Contentoの創設者でソムリエのYannick Benjamin(ヤニック・ベンジャミン)だ。彼は5年ほど前にニューヨークワインに深くのめり込み、新型コロナのパンデミックで国外に行けなくなると、その興味は一層高まった。
彼は言う。「ブルゴーニュのブドウ畑の場所はすべて言えるのに、自分の裏庭ともいえるここのワインについて深く語れないのは恥ずかしいことだと気づいたんだ」。
そこで彼は、裏庭とも言える東海岸のワインを再発見することにした。バーモント、フィンガー・レイクス、ロングアイランドのノースフォーク、バージニアなどのワイン生産者を訪ねた。その旅で、東海岸のワインがいかに特別なものかを知り、ローカルな食材を提供する地元のレストランこそが東海岸のワインを提供するべきだと悟った。
「ローカルであること、サステイナビリティ(持続可能性)を大切にしていると言いながら、半径100マイル圏内のブドウ畑の紹介をしないわけにはいかない。正気の沙汰とは思えないんだ」と彼は言う。
しかしながら、ベンジャミンは、ローカルなワインをオンリストするためだけにワインをセレクトしているわけではない。関係を築き、本当にお勧めできる、抜群な生産者、そしてワインを選んでいる。
コンテントのお客様への啓蒙
ベンジャミンは、来店したお客様にニューヨーク州の素晴らしいワイン造りを紹介することに喜びを感じている。
「オレゴンやカリフォルニアのワインと聞いても人はそれほどひるまないが、ニューヨークと聞いたときの反応は興味深い」と彼は言う。ローカル・ワインをオンリストしている場合、少し説明をしてあげた方が良いことに気づいたという。ニューヨーク市からわずか1時間北の場所に、最もピュアと言える花崗岩と、最高の水資源があり、その環境が凄いテロワールを生み出していることを。
「自ら調べて得た情報や教養ある情報を自分の言葉で伝えれば、人は耳を傾けてくれます」と彼は言う。ローカル・ワインに対する熱意と情熱も、顧客の興味をそそるのに役立っている。
コンテントのスタッフは、研修を受け、ワインのテイスティングもするが、ローカル・ワインを紹介し、提供するベンジャミンの接客を見ることが一番の学びになっている。
ベンジャミンがワインをお勧めし、顧客に寄り添い、その顧客が実際にワインを愉しんでいるのを見ることで、スタッフは自信を持ってローカル・ワインを勧めることができるのだ。
ニューヨークのワイン業界にとって、エキサイティングな時期に、携わることができる事はベンジャミンにとって喜びであり、他のニューヨークのレストラン経営者にもぜひ参加してほしいと考えている。
「ワインリストに自信のあるレストランやワイン・バーであれば、ニューヨーク産のワインを取り入れるべきです。少なくとも2〜3の地元生産者のワインがリストに含まれていないのは、私には考えられません」。
レストラン・オブ・ザ・イヤーを受賞
ヤニック・ベンジャミンは、ニューヨークワイン&グレープ財団が主催する2024年ユニティ・アワードでレストラン・オブ・ザ・イヤーを受賞した。この賞は、ファインダイニングでのニューヨークワインのプロモーションの卓越性を評価するものである。
「ニューヨーカーとして、大変誇りに思います」とベンジャミンは言う。「ニューヨークの農家の素晴らしい仕事ぶりを知っていただくためには何でもしたいと思います。これほどに素晴らしい人たちと共にあることは何よりの特権です」。
ぜひ、ニューヨークを訪問された際は、イースト・ハーレムのContento(コンテント)でニューヨークワインを探してみませんか。 詳細はレストランのウェブサイトをご覧ください。
画像提供:Contento
※本記事はワインライターのKathleen Willcox and Robin Shreeves がNYワイン&グレープ財団のために執筆した記事の抄訳版です。
Unity Awardsとは
ユニティ・アワードは、ブドウ栽培者、ワイナリー(およびそのスタッフ)、研究者、小売業者などの協力関係を認め、奨励し、業界全体の発展を祝うための手段として、1990年に創設されました。ニューヨークワイン&グレープ財団は30年以上、長年にわたってさまざまな困難に直面しながらも、共に働き、成功してきたニューヨーク州のワイナリーと生産者のコミュニティとそのメンバーの豊かな歴史に敬意を表し、その大胆な精神と数々の功績を認め、業界のリーダーたちとニューヨークワインのチャンピオンを称えることを誇りに思います。詳細はこちらをご覧ください。